【その他・爬虫類】カメのはく製について

※画像引用しています

こんにちは。
先日歩いてたら交番でウミガメの剥製が届けられる瞬間を見ました。
自販機の上に捨てて?あったんですって。謎すぎる。

今日は国際カメデーなのでちょっと真面目にカメの剥製について書いていきます。

🐢 日本におけるウミガメの剥製の歴史

―― 縁起物?信仰?装飾品?長寿の象徴として扱われた“海の守り神”


目次

はじめに:ウミガメと日本人の関係性

ウミガメは古くから日本の民間信仰・宗教・神話・芸術・食文化の中で、特別な存在として親しまれてきました。

  • 長寿や繁栄の象徴
  • 「竜宮城伝説」などの文化的イメージ
  • 珍しい来訪者=神の使いという捉え方
  • 一部地域では食用・薬用・工芸素材として利用

こうした文脈の中で、ウミガメの剥製も単なる観賞用を超えた“意味あるオブジェ”として扱われるようになりました。


剥製文化のはじまり(江戸時代〜明治)

■ 江戸時代(17〜19世紀)

  • ウミガメは“めでたいもの”=縁起物として扱われていました。
  • 剥製としての利用はまだ一般的ではなかったものの、甲羅を加工した櫛やかんざし(鼈甲細工)が流行。
  • ウミガメそのものの姿を保存する風習は、主に神社や寺における奉納用として限定的に行われていたと考えられます。

💡特に縁起を重んじる漁村では、「海神に感謝の意を込めて」奉納されることもありました。


■ 明治時代(19世紀後半〜)

  • 西洋の博物学の影響を受け、剥製技術が本格的に導入。
  • 博物館や学校での“学術展示用”として、ウミガメの剥製が製作・展示されるようになります。
  • 特に明治政府の殖産興業政策のもと、珍奇な動植物の収集・展示がブームになった時期。
  • このころから、「科学資料」+「装飾品」+「縁起物」という三位一体の扱いが始まります。

大正〜昭和:庶民文化と観光土産へ

■ 戦前〜戦後初期(昭和20年代ごろまで)

  • 剥製の技術がより広まり、旅館や商店の装飾品としてウミガメ剥製が飾られるように。
  • 特に伊豆諸島・小笠原・和歌山・沖縄・三重(熊野灘)などウミガメの上陸地がある地域では、地元民が「神の遣い」として丁重に扱う一方で、
    観光土産や“商売繁盛のシンボル”として飾る文化も広がります。

💡旅館の玄関や、昔のパチンコ屋・呉服店の天井に吊るされた剥製ウミガメを見たことがある方もいるかもしれません。
※わたしは三重県出身ですが見たことないですw


宗教・信仰との関係

  • 日本各地の漁村では、ウミガメが神仏や海の守護神の使いとされることが多く、剥製が“奉納品”として用いられてきた例も複数あります。
  • たとえば、海神社や八幡神社などにウミガメの剥製が飾られ、航海安全・豊漁祈願の象徴とされることもありました。
  • 一部の寺院では、長寿祈願・学業成就の象徴として飾られるケースもあり、亀=縁起物・福の神という認識が地域文化として定着しています。

沖縄における「ウミガメの剥製=贈り物」文化

どんな場面で贈られたのか?

  • 新築祝い(特に一戸建てや商店付き住宅)
  • 飲食店・民宿・商店などの開業祝い
  • 引越しや新築披露宴などの「盛大な節目」

いわゆる「胡蝶蘭を贈る」現代的感覚に近いですが、それ以上に“魔除け・福を招く”意味が強調されていた点が特徴です。


なぜウミガメなのか?

  1. 長寿の象徴(=末永く安泰)
     → 亀は昔から「千年生きる」とされ、長寿や繁栄のシンボル。
  2. 海の守り神・霊力ある存在
     → 特に沖縄では、ウミガメは「海の神の使い」「豊漁をもたらす存在」として信仰されることも多く、
     漁村や離島では“神聖視”されていた面が強いです。
  3. 家を守る魔除け(門口や天井に吊るす)
     → 特に剥製を「家の正面」「店舗の入り口」「天井の梁」などに吊るすことで、災いをはね返す御守り的意味があったとされます。

💡つまり「亀が見守ってくれる家=安全・繁盛・安泰」という考え方だったのです。


実際の贈答スタイル

  • 地元の漁師・海人(うみんちゅ)や剥製師が加工したウミガメを、立派な額縁や飾り台に乗せて贈呈
  • サイズによっては天井から吊るす「吊りガメ」スタイルも人気
  • 店舗によっては複数飾ることもあり、「ウミガメの数 = 縁起の良さ」というロジックで飾っていた例も

文化としての衰退理由

現代ではこの文化はほぼ見られなくなっています。その背景には以下のような要因があります。

  1. ウミガメの保護強化(絶滅危惧種・ワシントン条約など)
     → 野生ウミガメの捕獲・販売・輸出入が厳しく規制され、入手自体が困難に。
  2. 時代の変化による価値観の変化
     → 剥製=動物の命を使ったインテリアとして敬遠される傾向に。
  3. 観光業や商業の近代化・内地化
     → 開業祝いは胡蝶蘭や現金など“形式的・即効性重視”に移行。

💡今では一部の古い民宿・飲食店・港町の建物などに、かつて贈られた剥製が残っているのみとなっています。
  ちなみに保護の観点からウミガメの剥製は所持権利証みたいなのが必要なんですって。
  転売したらその権利証の書き換えが必要らしく、それが厄介で処分に困るものではあるみたいです。
  今回もそのせいで捨てられてたかなあ・・・


現在の扱いと変化

  • 現在、ウミガメ(アオウミガメ・アカウミガメ・タイマイなど)は絶滅危惧種に指定され、捕獲・利用には厳しい規制があります(ワシントン条約、種の保存法など)。
  • そのため、新たな剥製の製作は原則として禁止されており、過去に作られた剥製も、適切な保管・教育目的での展示が求められています。
  • 現存する剥製の多くは、博物館・郷土資料館・水族館・神社・古民家などに遺され、文化財・歴史資料として保存されています。

まとめ

ウミガメの剥製は、単なる“観賞用”ではなく、

  • 信仰の対象
  • 縁起物
  • 学術標本
  • 観光文化の象徴
    として、日本の各時代・地域で独自の意味合いを持ち続けてきました。

現在では新たな製作が難しくなった一方で、
昔の剥製は文化遺産として再評価されつつある存在ともいえるでしょう。
どこかの資料館に300個くらい寄贈されたって聞いたような。

もしどこかの古民家や神社、旅館でウミガメの剥製を見かけたら、
「ここにも長寿と海の神様の気配があるのかも」と思って、そっと手を合わせてみてください。めでたいものだからね。

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