【魚類】色々と話題/ブロブフィッシュについて

深海のアンラッキースター!ブロブフィッシュの哀しくも愛らしい正体

目次

はじめに:世界一不幸な魚の称号を持つ深海の住人

皆さんは「ブロブフィッシュ」という魚をご存じでしょうか?2013年に「世界で最も醜い動物」という不名誉な称号を獲得してしまった、なんとも気の毒な深海魚です。また今は某国のトップににネガティブな意味で似ているということでSNSで大人気に・・・。
でも実は、この子たちが「醜い」と言われるのは、人間の都合で深海から引き上げられた時だけの話。本来の姿は実に合理的で美しい、深海のエンジニアなんです!

基本情報:プロフィール紹介

  • 和名/学名:ブロブフィッシュ (Psychrolutes marcidus)
  • 分類:条鰭綱 スズキ目 ウラナイカジカ科
  • 原産地:オーストラリア南東部・タスマニア・ニュージーランド周辺の深海
  • 生息深度:水深600〜1,200メートルの深海底
  • サイズ:体長約30cm、体重約2kg
  • 外見:深海では普通の魚、陸上では…ゼリー状の謎の物体

あだ名:深海のゼリー、世界一不幸な魚、プルプル君
趣味:海底でじっと待機、エネルギー節約、深海の平和維持

生態編:深海1,000メートルの住人

1. 究極の省エネ生活

ブロブフィッシュは深海の省エネマスター!深海は食べ物が少ないので、とにかくエネルギーを節約することが生き残りの鍵。そのため、ほとんど泳がずに海底にじっと座って、口の前を通る小魚やクラゲをパクッと食べる「待ち伏せ戦法」を採用しています。

まるで深海のコタツに入っているおじいちゃんのように、動かずにじっと獲物を待つ姿は、ある意味とても賢い生き方なのです。

2. 深海の圧力に完璧適応

水深1,000メートルの世界は、地上の約100倍もの水圧がかかる過酷な環境。この圧力は、人間なら一瞬でペシャンコになってしまうほどです。

ブロブフィッシュはこの環境に完璧に適応するため、骨格を最小限にして、体のほとんどをゼリー状の組織で構成しています。これにより、強大な水圧でも体が潰れることなく、深海でごく普通の魚として生活できるのです。

3. 食生活:深海のグルメ

主食は深海に沈んでくる有機物、小さな甲殻類、クラゲ、そして時々海底を這う小魚など。深海は「海の砂漠」と呼ばれるほど食べ物が少ないので、何でも食べる雑食性を身につけました。

口は大きく開くことができ、目の前に現れた獲物を一気に吸い込む「バキューム食法」が得意技。まるで深海の掃除機のような食べ方です。

トリビア編:深海の悲劇のヒーロー

1. 「醜い動物」は人間のせい

2013年にイギリスの「醜い動物保存協会」によって「世界で最も醜い動物」に選ばれてしまったブロブフィッシュ。でもこれ、完全に人間の誤解なんです!
深海から急激に引き上げられると、体内の圧力調整ができずに膨張し、ゼリー状の体が崩れてしまいます。これは、宇宙飛行士が宇宙服なしで宇宙空間に出されるようなもの。本来の環境では、ちゃんとした魚の形をしているのです。
↓は海中での姿。結構普通ですよね。

2. 実は絶滅危惧種

ブロブフィッシュは現在、乱獲により個体数が激減しています。深海トロール漁の際に間違って捕獲されることが多く、このままでは絶滅の危険性も指摘されています。

「世界一醜い」なんて言われながらも、実は保護が必要な貴重な生き物なのです。

3. 深海の長寿魚

ブロブフィッシュは非常にゆっくりと成長し、寿命も長いと考えられています。深海の厳しい環境でエネルギーを節約しながら生きるため、成長も老化もスローペース。まさに「深海のスローライフ」の実践者です。

4. 子育ても超省エネ

繁殖期になると、雌は海底の岩の隙間に数千個の卵を産みます。そして雄がその卵をじっと守り続けるのですが、この期間なんと数ヶ月間!その間、雄はほとんど食事も取らずに卵を見守り続けます。

深海の厳しい環境で、これほど献身的な子育てをする魚は珍しく、実は深海のイクメンパパなのです。

5. 深海のバロメーター

ブロブフィッシュは深海生態系の健康状態を表すバロメーターとしても注目されています。彼らが生息する深海は、地球の気候変動や海洋汚染の影響を真っ先に受ける場所。ブロブフィッシュの個体数の変化は、地球環境の変化を知る重要な指標なのです。

研究価値:深海研究の重要なピース

現在、ブロブフィッシュは深海生物学の重要な研究対象となっています。極限環境への適応メカニズム、深海生態系における役割、気候変動への影響など、多角的な研究が進められています。

特に、彼らの圧力適応メカニズムは、深海探査技術や医療技術への応用も期待されており、「醜い魚」から「科学の宝」へと評価が変わりつつあります。

まとめ:見た目に惑わされない真の美しさ

ブロブフィッシュは確かに地上に引き上げられた時の姿は…独特です。でも、それは彼らが本来住むべき場所ではないから。深海1,000メートルの世界では、完璧に環境に適応した美しい魚なのです。

極限の省エネ生活、完璧な圧力適応、献身的な子育て、そして深海生態系を支える重要な役割…まさに深海のエンジニアであり、地球環境のバロメーターでもあります。

次回ブロブフィッシュの写真を見かけたら、「この子は本当は深海の素晴らしいエンジニアなんだ」と思いながら、彼らの真の姿に思いを馳せてみてください。きっと今までとは違った愛らしさを感じることができるはずです!

そして私たち人間も、外見だけで判断せず、その生き物が本来持つ素晴らしさを理解する目を持ちたいものですね。ブロブフィッシュは、そんな大切なことを教えてくれる深海の哲学者なのかもしれません。
沼津市の水族館で数日だけ居たことがあるそうで、いつか見られたらいいなー

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